剣道の「残心」と「礼」に学ぶ、試合で崩れない心の育て方

剣道には、「残心」や「礼」といった、心の持ち方そのものを稽古する考え方があります。打った後も気を抜かない、勝っても負けても礼で終える――この習慣は、試合の緊張や負けた悔しさと上手に付き合う力につながります。剣道を習う子はもちろん、ほかの競技をする子の家庭でも取り入れられるヒントをまとめました。
剣道が目指すのは「人間形成」
全日本剣道連盟(全剣連)は、剣道の理念を「剣道は、剣の理法の修錬による人間形成の道である」と示しています。勝ち負けだけでなく、稽古を通じて人として成長することが目的に置かれているのが特徴です。
全剣連は令和7年6月に「ハラスメント撲滅に向けて」という文書も出し、暴力やパワハラなどは根絶しなければならないとしたうえで、指導は社会の価値観の変化や、指導を受ける側の特性・要望を踏まえて行うべきだとしています。子どもの心を育てることは、競技団体としても重視されているテーマです。
「残心」――打った後こそ心を整える
日本武道協議会が中学校の授業向けにまとめた指導書では、残心を「打つ前も打った後も油断しない身構え」と説明しています。
残心をメンタルの面から見ると、こんな力に置きかえられます。
- うまくいった直後に気を抜かない:一本を取った後も、次に備えて構え直す。
- 失敗の直後に崩れない:打たれた後も、気持ちを切り替えて相手に向き合い直す。
たとえば、男子の試合で先に一本を取って気がゆるみ、すぐに取り返される。女子の試合で一本を取られた直後に焦って、打ちが雑になる。どちらも「一つのプレーの後」に心が揺れる場面です。残心は、その揺れを小さくする習慣だといえます。
「礼」――勝っても負けても同じ形で終える
同じ指導書は、「礼に始まり礼に終わる」ことを剣道の基本的な考え方として挙げています。また、試合の学習では勝敗の結果にとらわれすぎず、感情的になることを避けたいとしています。
勝った日も負けた日も、同じ作法で一礼して試合を終える。この「いつも同じ形」を、気持ちをリセットするための自分なりのルーティンとして意識してみましょう。
悔しさも「学ぶ材料」になる
指導書では、試合が、有効打突を得た喜びだけでなく、打たれた側の情けなさ・痛み・悔しさなどについて学び考える機会になるとしています。また、初めのうちは打たれることに恐怖感を抱くことがある、とも書かれています。
怖い、悔しいと感じるのは自然なこと。大切なのは、その気持ちを否定せずに、次の稽古につなげることです。
家庭でできる声かけ
日本武道館の剣道指導書(少年少女の指導)では、できない点ばかりを指摘せず、小さな段階(スモールステップ)でほめる機会を増やすことが有効だとしています。また、指導のし過ぎにならないよう留意することも挙げられています。家庭での関わりにも当てはまる考え方です。
| 場面 | 避けたい声かけ | 試してみたい声かけ |
|---|---|---|
| 一本取った後に逆転された | 「なんで気を抜いたの」 | 「一本取った後、どんな気持ちだった?」 |
| 負けて泣いている | 「泣いてもしょうがない」 | 「悔しいね。最後の礼、しっかりできていたね」 |
| 打たれるのを怖がる | 「怖がるな」 | 「怖いと思うのは自然だよ。今日は何回前に出られた?」 |
| 勝って浮かれている | (放っておく) | 「次の試合も同じ礼で始めようね」 |
ポイントは、技術の指摘は指導者にまかせ、家庭では「気持ち」と「できたこと」を言葉にしてあげることです。
サッカー・バレーボールの子にも
サッカーで得点した直後や、バレーボールで連続失点した直後は、チーム全体の気持ちが揺れやすい時間です。「決めた後こそ守備に戻る」「失点の後は一呼吸してから構える」は、剣道の残心と同じ発想です。試合前後のあいさつを毎回同じ形で行うことも、気持ちを整えるルーティンとして取り入れられます。
この記事は編集部が作成しました。内容の誤りやご意見はお問い合わせからお寄せください。
あなたはどの名手タイプ?生年月日と8つの質問で無料診断